2016/12/05

■人肌の句

鳥の巣にひとの匂いの雨が降る  榊陽子

「俳句のような句」という言い方は、川柳には褒め言葉にならないし、むしろ失礼なのだろうが、「鳥の巣」=春の季語という決まりごとに慣れたアタマには、そこを手がかりに雨の温度などにも思いが到り、「なるほど、人の匂い、か」と。

いや、多くの俳人にとっては、冬に「鳥の巣」が出てくることに驚くかもしれない。これは単なる習い性。鳥の巣は一年中ありまっせ、だんな。

一方、「ひとの匂い」という捉え方の興趣の領分が、川柳か俳句か、といったこともあるにはあるのですが、これ、じつはどうでもよくて、ジャンルとしての川柳/俳句の別はあるものの、一句を読むとき、向かい合うときは、区別なんて知ったことか、となってしまうのであります。

なお、掲句は以下のブログ記事より。
http://yoko575.blog.fc2.com/blog-entry-172.html


人肌の湿度や温度やテクスチャ、人肌の機微やら紆余曲折やら。この作家の句は、そんなところから始まるのかもしれない。

そんなふうに思うのは、同じ記事に、こんな句があるせいかもしれません。

マフラーを巻いて行き止まりの体位  同

マフラーと体位という、近いのか遠いのかわからない二物(「裸エプロン」ならぬ、「裸マフラー」という、素敵な絵も想像してしまった。神様、ごめんなさい)から来るのだろうか、乾いた即物性があります。さらに「行き止まり」に色濃い、ある種の「投げ出し」感。そのあたりのクールさがおもしろいわけです。




※動画は記事内容とさしあたり無関係。

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