2016/08/10

■崖とマヨネーズ 西暦2000年の倉本朝世

『現代川柳の精鋭たち 28人集-21世紀へ』(北宋社/2000年7月)を落掌。編者の表記がない点(そんな本ありましたね)、若干ひっかかりますが、気にしないことにしましょう。2000年当時の「現代川柳」(サラ川とはそうとう違う)の作家の句が100句ずつ。私が川柳に触れる以前の句を読めるのはありがたいことです。

気ままに引いていこうと思います。最初は、倉本朝世(1958-)。当時は40代前半。

たったひとりを選ぶ 運動場は雨  倉本朝世〔*1〕

家系図で包む大きな燐寸箱  同

大雨のうしろはきっと乳児室  同

口あけて模型の谷へ堕ちていく  同

母もその母も干潟が生んだ鳥  同

少年は少年愛すマヨネーズ  同〔*2〕

手は鳥の夢見てお釣り間違える  同

夜会服ひらひらそこは崖ですよ  同

海鼠踏んだら「トウキョウ」と音がした  同〔*3〕

※後半の数句は『なつかしい呪文』(2008年/あざみエージェント)
収録の模様で、この句集は既読。

引いた句を眺めてみると、〈大きな空間・大きな地理気象〉と暮らし(いわば俗世の事柄)が反応しあっている句が多い。

それにしても、おもしろい。

ポエテッィクな方面への傾きは少なく、誤解を怖れず言えば「俳」の要素が見て取れ、親しみを感じます。


なお、柳本々々に、倉本朝世句を取り上げた記事がいくつかある。以下にリンク。

〔*1〕
http://yagimotomotomoto.blog.fc2.com/blog-entry-405.html
〔*2〕
http://weekly-haiku.blogspot.jp/2014/11/blog-post_30.html
〔*3〕
http://yagimotomotomoto.blog.fc2.com/blog-entry-1190.html

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