2008/09/10

昭和8年の流行語

『モダン流行語辞典』なる辞典が手元にある。昭和8年刊。ポケットサイズで450頁ほど。めくってみると、いろいろとおもしろい。

意外だったのは、わりあいに新しく、せいぜい戦後から使われはじめたものだろうと、なんとなく思っていた語の多くが、昭和8年時点ですでに流行語として日常会話に定着していたことだ。

百パーセント
一パーセントと云ふのは百分の一、そこで百パーセントは一、まぜものなしの完全と云ふことである。これが近頃盛んに流行してゐる。例へば、百パーセントモガと云ふと、眞性眞銘のモダン・ガール。百パーセントの愛と云ふと完全な愛のこと。この言葉は何にでもつくので便利である

「彼氏」、「じゃんじゃん」、「ダンチ」(段違い)、「セコ・ハン」、「いみしん」(意味深長)なども、この辞典に収録されている。当時すでに、なのです。

言葉を略すパターンが多いのは今と変わらないが、「ウル・ナン」(ウルトラ・ナンセンス)は今は聞かない。「もち・コース」(もちろん+オブコース)は、私の年代だと、はるか昔に聞いたことがあるような気がする。

名詞を動詞のように使う例も当時からあった。

たくる
歩くことが「テクル」、デパートに出かけることが「デパル」、冗(くだ)らぬことを喋るのが「ダベル」と同様、タクシーに乗ることは「タクル」。

今でも使われますよね、タクル。ごく一部で。

「どーまり」って、なんの略だろうと思って読むと、「『どうもありがたう』が縮まり、『どうもあり』、それから『どうまり』となった」とある。今なら「あけおめ」か。昔の人も、同じようにバカなことやってたんですね。

女学生特有の流行語もある。

トテモロ
女學生流行語。非常にといふこと。

ルートの3
數學のルート3は開平法の示す様に割り切れない。そこで女學生間では封入のサインに用ひる、また態度のはつきりしない、にえきらない人のことを「あの人はルート3で困る」等と用ひる。

女学生もまた今も昔も変わらぬ不思議な存在なのだと思う一方で、「ほんとかなあ」と眉に唾つけてみたくなる。

監修の喜多壮一郎については、「早大教授」というほかは、あまりわからないが、実際に原稿を書いたのは出版社の社員か記者(今で言うライター)だろう。この辞典、ちょっといいかげんなところも多い。

例えば、ロボットの語源は、カレル・チャペックが戯曲「R・U・R」の中で用いた造語というのが定説だが、この本には「英人ウィリアム・H・リチャーズ大尉」が発明した「エリック・ロボット(Eric Robot)」が世界初の本格的人造人間で、それが語源と、堂々と書いてある。「ウィリアム」とか「リチャーズ」とか「エリック」とか、あまりに「いかにも」な固有名詞。

ひょっとして、デマカセ、書いてるでしょ?w

楽しめる辞典です。はい。

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