2017/10/13

■アイロンのこと星のこと

アイロンの胎内に水春の星  柴田千晶

たしかに水が入っている(入ってないのもあるよ、もちろん)。「胎内」の語で鉄の塊に性が宿る。「春の星」との照応は垂直。構図としてめずらしいものではなく、意図の明瞭さをきらう向きもあろうが、水がやがて水蒸気となり、その一部は空気中へ、空へと、霧消することを思えば、この垂直性は多声的。

それよりも、この湿度。春の星は、四季を通じて最も濡れていそうなのだ。

掲句は『hotel 第2章』第40号(2017年5月10日)より。



ところで、擬人法とアニミズムはときとして似ている。

作句作法上、忌避あるいは慎重を要請される擬人法。特定の句において称揚の脈絡で用いられるアニミズム。その境界は、それほど明確ではない。

アイロンに命が宿る/が命を宿す、という把握は、擬人法なのかアニミズムなのか、といった判断に、おそらくそれほどの意義はない。

擬人法だからダメ、アニミズムだからオッケー、といったオートマチックな判断二分法って、つまんないよね。

ラヴ&ピース!

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