2017/09/02

■「発電所」ってところがいいですね

発電所がなんでいいの? と訊かれても困るんだけれど。

『天の川銀河発電所 Born after 1968 現代俳句ガイドブック』(佐藤文香編著/左右社)。収録作家ラインナップを見て、読んだことがないのが多いなあ、という人は買うといいです。オススメ。

なお、外観は書籍(book)だけれど、中身はムック(mook)的。書籍を読み慣れない人にもとっつきやすい。足(賞味期限)は早そうだ。 



頁をめくっていて、引っかかるところが多かったのですが、それは私の感想としてね。「いい本か? よく出来ていると思うか?」と訊かれたら、首を縦に振れない。解説、対談、レイアウト、句群の扱い、作家の扱いetc、これでいいのか、ほかにやりようがなかったのかと思うところが多々。それらはハードウェア・ソフトウェア両面にわたる。

こうしたネガティブな感想・見解と記事冒頭の「オススメ」とは矛盾しそうだが、そうじゃなくて、オススメはするし、たくさん売れたらいいと思う。このあたりは自分で説明が難しい。

ちなみに、巻末の「収録作家分布図」のホット/クール、軽/重のマトリクスに、このアンソロジーをあてはめると、ホットかつ軽。編者・佐藤文香の作家としてのポジションに近い。編者の作家性が、アンソロジー全体の色合いを決めているということで、これは当たり前と言えば当たり前だが。

読者に託す部分があっていいのに(これはクールに属する)、どこまでも世話を焼く感じ。世話を焼きたいのか? 世話女房か?(脱線)

『天の川銀河発電所』は、編者が、よく言えば、がんばっている、悪く言えば、がんばりすぎた、気持ちを反映させすぎた。

でもね、世間は「がんばっている」のが好きなので、「気持ち」が好きなので、前述のように、好感されるだろう。

私の見解・好みはだいたいのところマーケットや俳句世間/世間から遠いので(これはこれで問題)、売れるだろうし(実際、初刷はすぐに売り切れて2刷が出るそうだ)、俳句世間/世間から好感されるだろう。とりわけ、編者や版元がいちばん手にとってほしいと考えているであろう「俳句の外」の人たちに。

繰り返すが、収録作家の多くが未読という人に特にオススメ。私も、まず開いたのは、読んだことがない人のページだった。

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