2017/04/03

■自転車からきのこへ 歌仙「自転車」解題〔1〕

七吟歌仙「自転車」を振り返ってみたいと思います。

http://sevendays-a-week.blogspot.jp/2017/04/blog-post.html

なお、付け筋etcは私の解釈。おおまかなルールやノリも私が親しくしてきた歌仙に準じたもの(私は四童さんところで歌仙をおぼえたので、「四童流」と言っていいでしょう)。異なる見解もあるものとして、おしゃべりにお付き合いください。

発端は、これ。
https://twitter.com/10_key/status/830064468742721537

「連句未経験」というユキオに「じゃあやりましょう」とお誘いして、発句をいただき、歌仙が始まりました(連句と歌仙の違いについてはググってね)。

初折表 自転車で空港へゆく日永かな  ユキオ

自転車好きの私への挨拶も含むと勝手に解釈。愛車の写真を貼っておきます。



1998年製。色はチェレステ(空色)。空港にぴったりじゃないですか。

場所は多摩川の土手。このまま川を下って川崎まで行けば、羽田空港はすぐです(まだ行ったことがないけど)。

で、脇句。

  東南東の風をおでこに  天気

脇は同時刻・同場所で付けます。付句は全体に前句から展開させます。くっついてちゃダメ。そんななか、脇句は例外。発句に向かって「いらっしゃいませ」と挨拶するので、寄り添う。

東南東の風は、ほぼ東風(こち)と解してください。有季です。俳人協会の人、聞いてる? これ、有季です。

「おでこ」では、ユキオさんのかわいらしいおでこを思い浮かべた。ユキオさん、聞いてますか? ここ、喜ぶか照れるかするとこです。

さて、3人目以降の連衆は公募スタイルにしました。「どなたでもどうぞ」と呼びかけたところ、

  黒猫は麻雀卓をぬけだして  牟礼鯨 

第三句は、発句脇句の挨拶の応酬から離れます。みごとに離れていただきました。アウトドアからインドアへの転換もそうなのですが、自転車や空港の開放感から、小博打、黒猫の凝縮感へ。

「て」止め(ほかの止め方も含め)、勢いを付けるという意味。「さあ、行くぜ」って感じですね。

  洋梨パイの焼き上がる頃  夜景

麻雀牌の「牌」からパイへ。言葉遊び(ダジャレ)系の付け方、私は大好き。音の相同=シニフィアンの相同をテコに、シニフィエの飛躍を狙う(ここ、笑うとこです)。攝津幸彦も多用した手法。

  月代を盛るにはうすい玻璃の皿  りえ

焼きあがったパイが皿へ。月の座、うくつしい。

  蘆刈る舟のものがたりせむ  若之

皿と舟。かたちの相同。「ものがたりせむ」は歌仙的想像に加速を促すとも。

初折裏 アイコンのきのこが熟す指の先  紫乙

「アイコンのきのこが熟す」はビデオゲームを思わせ、物語と響き合っています。
 
これで連衆が出揃い七歌仙となりました。

(つづく)

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