2016/05/23

■「いる」と「いる」 髙柳克弘句集『寒林』の一句

「いる」(動詞)は、終止形も連体形も「いる」。

句読点も「くぱぁ」(句の中の1字アキ)もない俳句において、この〔終止形連体形同形動詞〕はときに事件を引き起こします。


ぼーつとしてゐる女がブーツ履く間  髙柳克弘

この句ね、

  ぼーつとしてゐる女が///ブーツ履く間

一瞬、こう読んじゃいましたよ。

履くのを待っていると、イライラする、あるいは心配になってしまうだろうなあ。


いやいやいや、違う。違う。この句はもちろん、

  ぼーつとしてゐる///女がブーツ履く間

と読むべきなのです。


「をり」「をる」と終止形・連体形が別のかたちをとる動詞のありがたみに、ときどき思いを馳せてもいい。そんな思にかられる出来事でしたよ。今回の、「ぼーっとした女」事件は。


掲句は髙柳克弘句集『寒林』(2016年5月/ふらんす堂)より。

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