2014/12/05

■日向の椅子 岡田一実『境界』の一句

俳句は音数が限られているので(短いので、とは言わない)、省略や舌足らず、意味の不確定が生じる。

家具屋あり日向ぼつこの椅子のあり  岡田一実

「日向ぼつこの椅子」もまた、一種の省略、舌足らず。その椅子に坐って日向ぼっこをするそのための椅子なのか、椅子が日向ぼっこをしているのか。人によって読み方が違うかもしれません。

けれども、これは、どちらとも言えない、という効果を味わうべき句と思いました。

椅子が日向にある(日向ぼっこをしているようだ)。そこに(私が)坐れば、気持ちのいい日向ぼっこになるんだろうなあ、というような。

ふたつの読みのちょうど中間に、読者を誘う。これは、計算された舌足らずと言えそうです。


ところで、店内ではなく道にはなかばはみ出すように商品を並べた家具屋というのは少なくなりましたが、昔はたしかにありました。「町の家具屋」といった風情。懐かしさがよろしき下味にもなっています。


掲句は『境界』(2014年11月1日/マルコボ.コム)より。

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