2014/02/01

■男波弘志「俳諧風俗陳列棚 二」が楽しい

男波弘志「俳諧風俗陳列棚 二」20句(『里』2014年2月号)が楽しい。


来し方が黒いピアノになつてゐる  男波弘志(以下同)

ピアノならいいなあ。

こちらは「白いギター」くらいに悲しく安っぽいかもしれない。日曜午後の『TVジョッキー』(日本テレビ系列)が青春期に重なる世代としては。(わからない人は「白いギター TVジョッキー」でgoogle)


おつ勃(た)つたりおつ死(ち)んだり秋の雨だつたり

…には「椎名林檎五句」の詞書。


寺山を離るる修二枯野原

…は「修司」の誤りか。あるいは「修二会」と掛けてあるのか。前者と見るが、そうであってもあまり気にしない。

「テラヤマ」と、この四音を独特の湿度と距離感(肌触れ合うほどに近いという意味だけど)で口にする世代・社会集団に私はいないけど、隣にする機会は多い。たいていは酒の席。そうじゃないシラフでは、まあ、あまり聞きたくないわけですが。


冬の日や満艦飾の母とゐて

「お、お、おかあさん!」と叫びましょうか? テラヤマ風ではなく。


巨き巨き原子炉ほどの熊睡る

原子炉の句はほかに2句。「原子炉」は、俳諧・俳句のみならず、これから長きに渡って、寓話的に、あるいはそうでなく、想像の、あるいはそうではない風景の中に、繰り返し現れつづけるのでしょう。音(ゲンシロ)といい、漢字の組成といい、あの巨大な物語を背負うに(偶然にも)充分すぎる語です。

0 件のコメント: