2013/10/28

■伊勢


「伊勢」という二文字・二音があるだけで、情感が胸にひろがる。

  黒瓦波打つ伊勢の端午かな  内村恭子

  母在せば母にうるはし雪の伊勢  八田木枯

個人的な思い入れがあるわけではないのに、そうなる。その作用こそが歴史、といってしまえばそれまでなのだが、茫漠と豊かな歴史性(くわえて読み手によっては確かな光と感触を伴った地理性)が、句のなかに存する個別の経験、個別の気分と結びつくときに起こる俳句的快楽。


内村恭子『女神』2013/八田木枯『汗馬楽鈔』1988



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