2009/07/02

イ・チャンドン監督「オアシス」

(レンタルDVD)2002年韓国。

3度目の刑務所暮らしから出てきた、ちょっと知恵遅れの青年(29歳)。交通事故で死なせた男性(直近の服役がこの過失致死)の遺族を訪ねると、そこに重度脳性麻痺の若い女性。そんな彼と彼女の恋物語であるらしいこの映画、正直言って、ああ、エラい映画、借りちゃったなあ、と。

ところが、です。なんてきちんと腰の入った映画なのだろう。なんて気持ちのいい映画なのだろう。

彼女が取り残された部屋を飛ぶ白い鳩が、手鏡から反射する光に変わり…この時点で、もう、「あ、これはいい映画だな」とわかる。

重いっす。そりゃ、知恵遅れと脳性麻痺だもの。でも、ひりひりします。ふわっともします。

例えば、車椅子から、ヒロインがみずからの夢想へと立ち上がる瞬間の美しいこと、せつないこと。あの冒頭の鳩と鏡の光のメタモルフォシスですね。

主演女優のムン・ソリは、この映画でえらい評判になったそうだ。主演男優ソル・ギョングも素晴らしく上手。でも、なんといっても、監督がよろしいです。イ・チャンドンは信用できる監督という確信を持ちました。

星3つ半。んんん、思いきって4つ?

ちなみに、主人公のふたりが「あっち側」の人間で、私たちがいわゆる「健常者」という「こっち側」から観て、どうのこうの、という話ではない。そういう、観客の叙情や偽善に寄りかかったところがない。その部分で、このイ・チャンドン監督は「信用が置ける」ということなのですね。

「私」が社会から疎外された存在ではない、と、誰が言えるか。社会は、世界は、荒涼たる砂漠である(ここ、ちょっと笑うとこ)。私の「オアシス」って何なのだろうなあ。

2 件のコメント:

水星人 さんのコメント...

この映画、せつないですね。大好きです。
ソル・ギョングは、「悪い男」などにも出ていますが、本当に上手ですね。

tenki さんのコメント...

ヒロイン役よりむしろ微妙な演技。それを、まあ、巧く表現していました。ギョング氏。